さよならの続き
フォンダンショコラを口にすると、チョコが甘ったるく舌で溶け、ほのかに苦みが残った。
タルトを咀嚼してごくりと飲み込んだ渚が、静かに口を開く。
「私ね、ついこの前たまたま金井くんに会って、てっちゃんと結婚するって話をしたの」
「え」
「もうすぐ入籍するし、金井くんはてっちゃんとも同じ部署だったから面識があるわけだし、言っておいてもいいかなって思って」
陽太とは一昨日会ったけど、渚に結婚報告をされたという話は聞いていない。
私の反応でわかったのか、それとも最初から予想していたのか、渚は確信のような問いかけをする。
「金井くんからこのこと聞いてないでしょ」
こくんと頷いた。
渚と吉岡さんが付き合っていることを陽太は知らなかったはずだから、とても驚いたに違いない。
以前なら、私と会えば真っ先にその話題を口にしていただろう。
だけど、陽太はそんな素振りを一切見せなかった。
「有梨に気を使って『結婚』っていう言葉を出したくなかったんだろうね」
「…うん」
何をどこまで話していいのか、どう行動していいのか、どうすれば安心してもらえるのか。
私はいつもそれを手探りしているけど、陽太だって同じように私に気を使っている。
壊れ物に触れるように、こわごわと。
タルトを咀嚼してごくりと飲み込んだ渚が、静かに口を開く。
「私ね、ついこの前たまたま金井くんに会って、てっちゃんと結婚するって話をしたの」
「え」
「もうすぐ入籍するし、金井くんはてっちゃんとも同じ部署だったから面識があるわけだし、言っておいてもいいかなって思って」
陽太とは一昨日会ったけど、渚に結婚報告をされたという話は聞いていない。
私の反応でわかったのか、それとも最初から予想していたのか、渚は確信のような問いかけをする。
「金井くんからこのこと聞いてないでしょ」
こくんと頷いた。
渚と吉岡さんが付き合っていることを陽太は知らなかったはずだから、とても驚いたに違いない。
以前なら、私と会えば真っ先にその話題を口にしていただろう。
だけど、陽太はそんな素振りを一切見せなかった。
「有梨に気を使って『結婚』っていう言葉を出したくなかったんだろうね」
「…うん」
何をどこまで話していいのか、どう行動していいのか、どうすれば安心してもらえるのか。
私はいつもそれを手探りしているけど、陽太だって同じように私に気を使っている。
壊れ物に触れるように、こわごわと。