さよならの続き
数日後、『今日は早く帰れそうだよ』とメッセージがきた。
時計を見れば19時半。確かにいつものMRよりは早い。
次に会った時には絶対に言おうと覚悟を決めていたから、『話したいことがあるから、自分で陽太の部屋に行く』とメッセージを返した。

傷つけたくないとその場をやり過ごしても、結局それが傷を広げることにつながる。
このままでいても、悪いほうにしか進まない。
中途半端に混じり合った気持ちは、もう絶たなければならない。

「お疲れ」
「うん、お疲れ様」

すでに部屋着に着替えていた陽太は、背を向けてリビングへと入っていく。
陽太は静かにリビングのソファに腰をおろし、私はソファの下に座った。

全てわかっているんだろう。
光のない落ち着いた瞳が、私を見おろしている。
それに心が痛みながらも、私はもうこの意思を翻すことができない。

「ごめん、陽太。もう別れよう」

静まり返った部屋に、自分の言葉が妙に響く。
電車の中でさんざん何を言えばいいのか考えてきたはずなのに、それがひとつも浮かばない。
不自然なくらいに落ち着いた空気の中、次の言葉を探していたら、陽太の穏やかな声が降ってきた。

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