さよならの続き
朝起きて鏡を見たら、目が腫れていた。
黒目が半分隠れていて、これは誰だろうと自分でも疑ってしまうくらいだ。
昨夜さんざん泣いたけど、まさかこんな惨状になるとは思わなかった。
この顔で仕事に行くのは恥ずかしくて、コンタクトではなく自宅用のメガネをかけて会社へ向かった。

お昼は渚と待ち合わせをして、ラウンジで一緒にランチをすることになった。

「お待たせー」
「うん、お疲れさま」

先にベンチで待っていた渚は、私を見て小さく苦笑いを浮かべた。

「そのメガネ、久しぶりに見たなあ」
「そうだね」

言わずとも、陽太と別れたことは渚にはわかっているのだろう。
『久しぶり』というのは、航平と別れたあとしばらくこのメガネをかけて出勤していたからだ。
年代物の黒縁メガネは、腫れぼったい目の素顔でいるよりも案外目立ってしまうのかもしれない。

今朝、吉岡さんにも『今日はメガネなんだね』と声をかけられたけど、鋭い彼にも事情はばれているだろう。

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