さよならの続き
昼過ぎの眠くなる時間帯、休憩室へ行った。
自販機に小銭を入れ、迷わずいつもの紅茶のボタンをタッチする。
ベンチに腰掛け喉を潤していると、近づいてきた靴音が休憩室に入って来た。
振り返ると、それは航平だった。
こんな日に限ってこんなところで会ってしまうなんて…

「お疲れさまです」

メガネの奥を見られるのが怖くて、俯き気味に頭を下げた。
だけど彼は挨拶を返してくれることはなく、ベンチから少し距離を置いて壁に寄りかかった。

「…もう話しかけないって言ったのに、ごめん。金井くんと別れたの?」

マズイ。航平もメガネで気づいてしまったのだ。やっぱりこれは失敗だった。

「課長のせいじゃないので、気にしないでください」
「気にするだろ。俺がふたりの仲を邪魔したなら――」
「違います」

不細工な顔ながらも、開き直って航平を見上げる。

「私たちの間に生じていたずれは、課長には全く関係ないです」
「でも俺がいることで金井くんの不安を煽ったのは確かなんだろ」
「彼を不安にさせたのは私です。課長は何も悪くない。ただ私が…」

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