さよならの続き

【SIDE 航平】


健康診断で引っかかって再検査になったのは、異動になる前の秋のことだった。
誤診だろうと思ったけど、簡単な検査で終わることはなくいくつも検査もさせられて、結果心機能が弱っていることがわかった。
今すぐどうにかしなければならないものではない。
だけどもし悪化しても、俺は乳児の頃にした心臓手術のせいでペースメーカーをつけることができないという。
できるのは薬を飲むことくらいだ。

診断がおりて、真っ先に頭に浮かんだのは有梨のことだった。
心機能がさらに低下すれば死んでしまうかもしれない。
心室細動で突然死のリスクも人より高い。
常に死を意識しながら暮らしていかなければならなくなる。
薬を飲んでいたら、子どもも作れないかもしれない。
有梨はいつか子どもがほしいと言っていたのに。

俺と一緒にいても、有梨は幸せになれない。
わかっているのに、俺は有梨から離れられなかった。
あと少しだけ。もう少しだけ。
そう言い聞かせて、打ち明けることもできないままずるずると彼女のそばに居続けた。

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