さよならの続き
仕事のあと、航平のアパートへ直行した。
私が帰るとき航平はまだ仕事をしていたから、ここで待っていれば会える。
部屋にいる時に訪ねてきても、もうインターホンにすら出てくれないような気がするから。

ひさしのついているドアの前にしゃがみこんだ。
梅雨に入り、空からは涙のような雨がぽたぽたと零れている。
退職の6月30日まであと2週間。
本当に急な話だ。
だけど、私が知らないだけで退職の話は前々から進んでいたのかもしれない。
休憩室で陽太と出くわしたあの日も、午前中は病院へ行っていたんだろう。
もっと早く気づけたらよかった。
私はいつも自分のことばかりで、航平がつらい気持ちを抱えているなんて考えもしなかった。
3年前も、今も。

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