さよならの続き
21時を過ぎて、航平の車が帰って来た。
ライトに照らされ、光が角度を変えていき、パッと消える。
ゆっくりと降りてきた航平は、私がここで待っている事を予想済みのようだった。
表情を変えず、私の元へ歩いてくる。

「ダメだよ、こんな遅くに。雨も降ってるし、また何かあったら大変だ。送っていく」
「…航平!」

背を向けた航平は、私の声に肩を揺らした。
このひとを名前で呼ぶのは、あの雨の日以来だ。
この名前を口にしたら気持ちが溢れて止まらなくなることを、私はきっとわかっていた。
でも、もう気持ちを止める必要はどこにもない。

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