さよならの続き
「あの、渚…」

聞いてもいいものか迷って言い淀むと、渚はお見通しのように静かに答えた。

「電報はきてたけど、ここに来てたかどうかはわからない」
「…そう」

披露宴で『西嶋航平』の席は空席になっていた。
会えるかもしれないと期待していたけど、やっぱりそうはいかなかった。
だけど、挙式後のフラワーシャワーはきっとどこかから見て祝福していただろう。
航平にとって、吉岡さんはとても大切な友人だったはずだから。

吉岡さんは、もう航平とは電話も繋がらないと言った。
自分の身に何かあった時に連絡がいかないようにしたいと漏らしていたそうだ。
別の場所で仕事は続けていくんだろうけど、そこで親しい人間関係は築かないようにするのだろう。
誰も泣かないように。
誰の心も痛めないように。

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