さよならの続き
「航平」

座っていた航平が肩を揺らし、振り返って目を丸くした。

「なんで…」
「前に言ってたでしょ。振り向いたら、誰かさんが微笑んでたりしないかなって」

困惑した様子の航平が逃げられないように、そのまま背中から抱きついた。

「そばにいるよ、ずっと」
「…っもし俺に何かあったら、有梨はもっとつらい思いをする。そんなのは耐えられない」
「勝手に人の気持ちを決めつけないでくれる?私は私なりの覚悟と決意を持って今ここにいるの」

明るい声で言ったら、強張っていた航平の身体が少しだけ緩んだ。
手を離し、航平の前に回り込んでしゃがむ。

「寿命が長いとか短いとか、そんなの関係ない。生きてる限り、ずっとそばにいる」

まだ茫然としていた航平は、ハッと我に返ったように顔をそらした。

「…ダメだよ。送るから帰ってくれ」
「まだ意地を張るの?」
「意地だとか、そういう問題じゃないだろ」

誰がなんと言おうと、私には航平だけだ。
今航平を目の前にして、私はますますそれを確信した。
例えばもしも、明日この人が死んでしまうとしても、私はやっぱり最期まで一緒にいたいと思う。

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