さよならの続き
「なあ有梨」
「ん?」
「母親が死んだとき、俺は天涯孤独になったんだ。でも、どうせ人より早く死ぬんだったら、独りでいいと思った」

明るい話ではないのに、航平はふわりと吹く潮風に気持ちよさそうに目を閉じる。

「だけど、有梨の夢を見るんだ。
仕事を頑張りすぎて思い詰めたり、お参りで同じ願い事をしてたり、怖い夢を見たって泣いたり、嫉妬して拗ねたり、キスすれば俺の風邪が治るなんて言ったり」

航平は思い出したようにくすりと笑う。

「割り切ったつもりで、全然割り切れてなかった。有梨を幸せにするのが俺だったらいいのにって、そういう未練で俺は生きていられたのかもしれないな」
「航平…」

何が楽しいのか、キャハハッと笑いながら走る航太。
航太の姿を目を細めて見つめたあと、航平はゆっくり私に目を向ける。

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