さよならの続き
お腹が空いていたらしく、陽太はお弁当とサンドイッチ。
私は菓子パンをひとつ買ってマンションへ行った。

「これだけで足りるの?」
「うん、足りなかったら家に帰ってから何か食べる」

陽太がお弁当を温めている間に、私は先に買ってきたウーロン茶で喉を潤す。

「そういえば、新しい課長はどんな人?課長クラスだとだいぶ年上――」
「ゴホッ」
「おい、大丈夫か?」

動揺して思いきりむせこんだ。
異動の話題は車の中で終わったと思っていたから、今そんな話が出てくると思わなかった。
咳が止まらず、苦しくて涙が滲む。

「急にどうした?」
「なんでもない…むせただけ」
「もう平気?」
「うん、おさまった。ありがと」

痰が絡んで咳ばらいをしながら、胸をトントンと叩く。
背中をさすってくれていた陽太と視線が合って、じっと見つめる彼に首を傾げた。

「陽太?」
「涙目で上目遣いとかかわいすぎるからやめて」
「え?そんなつもりないんだけど」
「いや、そうなんだろうけどさ」

苦笑いをしながら、私の顎をゆっくり持ち上げて唇を重ねる。
じゃれるような軽いキス。
音を立てて啄み、また重なる。
首の後ろに腕を回すと、応えるように背中を抱いてくれる温かい腕。
伝わる熱に胸が痛くなる。

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