さよならの続き
陽太はこれ以上のことをするつもりはないだろう。
まだ夕食も食べていない。
このあと、帰りは送ってくれることになっている。
遅くなったら明日の仕事がきつくなる。
わかっている。
わかっているのに……

電子レンジの過熱終了音が響き、それを合図にするように唇がゆっくり離れる。
私は陽太の髪の毛に指を差し入れ、離れかけた頭を引き寄せた。
唇を押し付け、緩んだ隙間から舌を滑り込ませる。

「…有梨?」

絡めた舌から陽太の戸惑いが伝わる。

どうしてこんなに不安になるんだろう。
なんでこんなに心細いんだろう。
陽太は今こんなにそばにいるのに。

『会いたかったんだ』

やめて。どうしてこんな時に浮かんでくるの。

不意に陽太の腕が力を増し、キスの主導権が彼に移った。
夢中で繰り返される深いキスに息が上がる。
舌がとろけて同じ温度になり、もうどちらのものかもわからない。
それでもざわざわした気持ちは消えない。

『会いたかったんだ』

やめてよ。私は…
もう二度と、会いたくなかったのに。

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