さよならの続き
翌週、医事情報管理課にいる同期、牧田渚(まきた なぎさ)と社食で待ち合わせをしていた。
渚は研修で仲良くなった、社内では唯一なんでも打ち明けられる友人だ。
渚は私と航平の事情も知っているし、今私が陽太と付き合っていることも知っている。
同じ野菜炒め定食のトレイを持って席に着く。

「お局様はどう?」
「熨斗つけてお返ししたいくらいよ」

苦虫を嚙み潰したような顔をして即答するから、笑ってしまった。
渚がいるのは、お局様が異動していった部署だ。

「ホントにきたばっかりなの?ってくらい態度が偉そう」
「そっか。どこに行ってもお局業を発揮しちゃうんだろうね」
「ある意味メンタル強いっていうか、タフで羨ましい」
「そうだね」

味噌汁に箸をつけ、鰹出汁の匂いに癒される。
ご飯に味噌汁、野菜炒め、漬物、厚焼き玉子。これでワンコインなんてありがたい。

「それより、まさか帰ってくるなんてね。てっちゃんに聞いてびっくりしたよ」
「うん、私もびっくりした」

持った茶碗に目を落としたまま渚が呟くように言って、小さく苦笑いを返した。
てっちゃんというのは吉岡さんのことだ。
渚と吉岡さんは4年ほど付き合っている。
もちろん社内では秘密の話で、知っているのは私と航平くらいだろう。

< 28 / 170 >

この作品をシェア

pagetop