さよならの続き
「あの頃、ちょっと有梨大変だったから。心配してるだけ」

オブラートに包まれた言葉だったけど、意味は理解していた。

「ごめん、迷惑かけたもんね」
「迷惑とは思ってないけど、有梨がまたあんなことになったら嫌だなって」
「うん。ありがと、心配してくれて」

あの頃精神的につらかったのは確かだけど、起こった出来事は偶然でしかない。
食欲が落ちてだいぶ痩せていたし、睡眠不足もあって免疫力が落ちていたんだと思う。
たまたま引いた風邪をこじらせてしまい、気管支が炎症を起こし、脱水症状にも陥っていた。
渚が吉岡さんを呼んで車を出してもらい、病院に運ばれる事態になったのだ。
だけど、あの頃とはもう違う。
今の私には支えてくれる人がいる。

「陽太に大切にしてもらってるから、私は大丈夫だよ」
「…うん、そうだね。金井くんがいるんだから大丈夫だよね」

くるんと巻いたセミロングの毛先が揺れ、やさしい顔が笑った。



< 30 / 170 >

この作品をシェア

pagetop