さよならの続き
部屋の外に出ていた航平が、終わった?と口パクをして遠慮気味に入って来た。

「もう少し眠れば?帰りは車で送るから」
「いえ、もう大丈夫ですから」

布団をはいで立ちあがろうとしたら、目の前が揺れて同時に頭痛がきた。
枕に倒れ込むと、ほら、と航平の笑い声が降ってきた。

「自分が思ってるよりずっと残ってるんだよ。寝てていい。俺シャワーしてくる」

背を向けた彼が、あ、と思い出したようにこちらを振り返る。

「同じベッドで寝ててごめん。ウチのリビング、ソファないしラグもカーペットも敷いてないんだ。さすがに身体が痛くてギブアップした」
「そんな、私がベッドを占領してたら申し訳ないです。気にしないでください」

航平はホッとしたように部屋を出て行く。
最初はフローリングにひとりで寝ていたということだろうか。
それは身体が痛くなるに決まっている。
申し訳なさそうにしていたけど、酔って迷惑をかけて、その上ベッドまで借りて。
謝らなきゃいけないのはどう考えても私のほうだ。

…こんなに関わるつもりなんてなかったのに。
だから安心していたのに。
…安心?どうして?

疑問はすぐに霧に包まれていって、ふわふわした心地よさに誘われて瞼を閉じた。
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