さよならの続き
「そういえば、お酒飲まなかったんですか?車だったって言ってましたけど」
「最近もう全然飲まないんだ。主役なのにって周りには言われたけど、ノンアルのビールを飲んでた」

酒好きというほどではないけど、昔は毎晩晩酌をしていたはずなのに。
疑問に思ったけど、聞く暇もなく十字路に入り、案内しながら進むと5分もかからずに私のマンションへ着いた。

「ありがとうございました。ご迷惑おかけしました」

シートベルトをはずし、深々と頭を下げてドアを開けようとしたとき。

「…待って!」

手首を掴まれて肩が揺れた。
振り返ると、航平は怖いくらいに鋭い目つきで私を見ている。

「本当に迷惑かけて悪かったって思ってる?」
「え?思ってます、よ?」

言葉の意図がわからず、戸惑いながら答えた。
ふっと彼の表情が緩み、狙っていたようにニヤリと笑う。

「お礼に、デートに付き合って」

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