さよならの続き
「課長、すみません」

航平は顔を上げ、私の話を頷きながら聞いた。
顎に手をあてて少し考えたあと、航平は言った。

「書き換えは難しいだろう。新しく作って前のデータを消去するしかない。八代さんには俺からメールで指示する。星野さんはコンピュータ室に行ってデータの消去を頼んでくれ」
「いいんですか?一時的にデータがなくなってしまうことに…」
「それで何かあっても、全責任は俺が持つ。心配しないで俺の指示に従って」
「はい」

頭を下げて執務室を出る。
不安ばかりが募るけど、今は航平の指示に従うしかない。
エレベーターを5階上って、コンピュータ室へと向かう。
コンピュータ室の面々は私の話に戸惑っていたけど、普通ならあり得ない事態なんだから当然だ。
先週の私が担当したデータはいったん削除してもらことになり、急いで自分のフロアに戻った。

「星野さん、データは消せたか?」
「はい。すぐに新規で入れ直します。ご迷惑おかけしました」

航平に大きく頭を下げて自分のデスクに戻る。

< 59 / 170 >

この作品をシェア

pagetop