さよならの続き
鏡を見て眩暈がした。
首筋に赤い花びらがいくつも散っている。
独占欲の証というものを、普通は喜ぶべきなんだろうか。
思わず目を背けてしまった私は、きっと間違っている。


翌日の昼は、渚に誘われて社食で待ち合わせをしていた。

「お待たせ、渚」
「うん、私もさっき来たばっかり…」

渚が言葉を止めて目を丸くする。

「有梨、それキスマークだよね。そんなに目立つところに何カ所も…」

曖昧に苦笑いをした。
やっぱりコンシーラーはあまり意味がなかったようだ。
顔用なんだから首とは色が少し違うし、あまり塗れば逆に不自然になる。
首の皮はよく動くから、どちらにしたってすぐによれてしまう。
湿布でも貼ってきたほうがよかったんだろうか。

「金井くんと何があったの?」
「うん、実は――」

気持ちの整理ができないまま、渚にとりとめのない下手な説明をした。
渚はご飯を食べる手を止めて、何度も頷きながら聞いてくれた。

「そっか。そんなことがあったんだ」

手をつけられないコンビニのサンドイッチに目を落とす。


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