さよならの続き
突然、陽太はビールの缶を垂直に傾けて、喉ぼとけを揺らしながら飲み始めた。

「ちょっ…まだけっこう入ってるでしょ?ダメだよ一気のみなんて…」
「なあ有梨」

缶をテーブルに置きながら私の声を遮った陽太は、こちらを向いて覚悟を決めたように私を見据える。

「本当は有梨の誕生日に言おうと思ってたんだけど、やっぱり今日言う」

なんのことかわからず戸惑っていると、陽太が短く息を吸い込む。

「俺と結婚してほしい」

一瞬思考が止まった。

…結婚?私と陽太が?

突然のプロポーズに戸惑ったけど、それ以上に『結婚』という言葉に全く現実味を持てない自分にも戸惑った。
思えばこのくらいの年齢ともなれば、将来を見据えて付き合っていくのは当然のことなのだ。
だけど、私は陽太との今後を具体的に考えたことがなかった。

「…有梨」

不安げな声が私を呼ぶ。

「…ごめん。結婚って意識したことなくて…まだそういうの、考えられない」

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