さよならの続き
「例のかっこいい彼と別れちゃったの?」
「例のって…」
「あらあ、別れたの?なかなか結婚の挨拶に来ないから、妊娠報告が先かしらってお父さんと話してたのに」
母が湯呑をのせたお盆を運びながら話に入って来た。
例の…というのは航平のことだろう。
私の家族は恋人や結婚について詮索したり催促したりしないから、多分4年ほど前の姉の結婚式の時に自分からぽろっと話しただけだと思う。
そういえば、あのころ私は航平と結婚するのだと当然のように思っていた。
プロポーズはされていなかったけど、航平とも将来の話を当たり前にかわしていた。
だから家族の前でも話をしたのだ。
『かっこいい彼』だなんて、浮かれてそんなことを言っていたとは思わなかったけど。
「…ねえお姉ちゃんはなんで結婚しようと思った?」
「はあ?」
姉が突飛な声をあげ、母がいる手前照れているのか、もごもごしながら答える。
「そんなの、シンプルに一緒にいたいと思ったからじゃない?もう忘れたよ、何年も前のことだし。今はひよりが中心で、もう生活共同体みたいなとこあるし」
一緒にいたいと思ったら結婚する。
じゃあ一緒にいたいと思わないから結婚に気持ちが向かわない?
いや、そんなことはないはずだ。
どうして航平とは描けた未来を、陽太とは描けずにいたんだろう。
「例のって…」
「あらあ、別れたの?なかなか結婚の挨拶に来ないから、妊娠報告が先かしらってお父さんと話してたのに」
母が湯呑をのせたお盆を運びながら話に入って来た。
例の…というのは航平のことだろう。
私の家族は恋人や結婚について詮索したり催促したりしないから、多分4年ほど前の姉の結婚式の時に自分からぽろっと話しただけだと思う。
そういえば、あのころ私は航平と結婚するのだと当然のように思っていた。
プロポーズはされていなかったけど、航平とも将来の話を当たり前にかわしていた。
だから家族の前でも話をしたのだ。
『かっこいい彼』だなんて、浮かれてそんなことを言っていたとは思わなかったけど。
「…ねえお姉ちゃんはなんで結婚しようと思った?」
「はあ?」
姉が突飛な声をあげ、母がいる手前照れているのか、もごもごしながら答える。
「そんなの、シンプルに一緒にいたいと思ったからじゃない?もう忘れたよ、何年も前のことだし。今はひよりが中心で、もう生活共同体みたいなとこあるし」
一緒にいたいと思ったら結婚する。
じゃあ一緒にいたいと思わないから結婚に気持ちが向かわない?
いや、そんなことはないはずだ。
どうして航平とは描けた未来を、陽太とは描けずにいたんだろう。