さよならの続き
『そんなにきれいな海なの?』
『沖縄よりきれいかもよ』
『行ってみたいなあ』
『今度行こう。実家に挨拶に行くときにでも』
『えっ?えっ?』
『有梨、顔真っ赤』


「え?新幹線で帰らないの?」

実家に2泊し、友人たちとたくさん遊んで、姉に車で駅まで送ってもらう帰り道。
姉は運転しながら訝し気に言った。

「いったん戻ってきてまた新幹線に乗るよ」
「なんでそんなめんどくさいことするの」
「行きたいところができたんだ」

チャイルドシートのひよりにバイバイ、と手を振ったら、音の鳴るおもちゃを掴んでぶんぶん振っていた。
バイバイを返してくれたのか、ただ偶然振っていただけなのかはわからないけど、かわいくて別れが惜しくなった。
次に会えるのはきっとお盆。そのころにはもっと歩くのが上手になっているだろう。

駅は混雑していて、当然ながら新幹線だけでなく特急列車も混んでいた。
寄り道の予定を立てていなかった私は特急のチケットを事前に取っていなくて、指定席が全て埋まっている中、1時間ほど立ったまま揺られた。
帰りもまた特急で新幹線が止まる駅まで戻って、そこから東京に帰るのだ。
姉の言う通り、なんでそんなめんどくさいことをするんだろうと自分で思いつつ、目的地の駅に着いた。


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