さよならの続き
「星野さん?」
聞き慣れた声に振り返った。
夢の続きを見ているのかと思った。
いるはずのない人がそこにいる。
言葉は何も出て来ず、時が止まったように彼を見つめた。
目を見開いていた彼は、すぐに朗らかに笑みを浮かべ、石段を降りてやってくる。
「君も観光?」
「…君もって、課長も?」
「実家にきたときはいつも寄るんだ。わりと近いから」
そういえば、近いと言っていたような気がする。
土地勘のない私にはよくわからず、聞き流してしまっていたけど。
「まあ、母親が去年死んだから、実家は今空き家状態なんだけどね」
「お母様、亡くなられたんですか…」
航平は一人っ子で、父親は早くに亡くなったと聞いた。
お母さんだって、まだまだ若い年齢だったはずなのに。
航平は、実家に帰ってももう誰もいないんだ…