さよならの続き
「星野さんは実家に帰らなかったの?」
「帰った帰りに思いつきで寄ってみたんです」

彼は合点がいかないように首を傾げる。

「思いつきで、実家からここまで?急行で?」

頷くと、ふっと吹き出してコロコロ笑った。

「行動力ありすきだろ」

そんなに笑われると恥ずかしい。
確かに、我ながら衝動的にすごいことをしているなと思うけど。

「観光するには、何にもない田舎だよ。ここくらいしかない」
「そうみたいですね。でもいいんです」

航平が次の言葉を待つように黙ったから、海に目を向けたままゆっくり口を開いた。

「昔、誰かさんに言われたんです。すごくきれいな海なんだって。だから、いつかその誰かさんと一緒に来たいって願ってた」

言わなくてもいい本音を付け足してしまったのは、現実味がないからだろうか。
それとも感傷的になっているからだろうか。
神様のいたずらで、予想外にもその願いは叶ってしまったのだけど。


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