おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

 千春は悩んだ末に白一色のシンプルな棚を買った。グッズを引き立たせるためには、色も造りもシンプルな方が使い勝手が良い。香月も棚板が可動式の収納力抜群の本棚を購入した。
 ついでに千春好みの雑貨も数点購入し、レジでお会計を済ませる。

「車に積んでくるから、ここで待っててくれ」
「わかった」

 香月が車から戻ってくるのを待つ間、千春は周辺を物色し始めた。

 出口付近には大きなアクアリウムゾーンがあり、小型水槽には小さな子供達が目をキラキラ輝かせ群がっていた。千春も水槽をひとつひとつ眺めていった。

 グッピー。アカヒレ。エビ。メダカ。

 水槽の中には様々な種類の生き物が飼育されており、道行く人を楽しませていた。
 千春の足が金魚の水槽の前で止まる。

「ハチローに似てる……」

 金魚の水槽の中では千春のペットだったハチローと似た配色の金魚がスイスイと尾を震わせながら優美に泳いでいた。

 ハチローは夕陽とおなじオレンジ色で、黒のブチ模様だった。ハチローが死んでしまったのは嵐の通り過ぎた翌日のことだった。鉢の中に空気を送るポンプが停電で止まってしまったことによる不幸な事故だった。

< 119 / 171 >

この作品をシェア

pagetop