おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜


 香月が不在の夜、千春はひとりリビングのテレビでゴルステを見ていた。香月がいないのに張り切って料理をする気にもなれず、スーパーで買ってきた弁当を食べたがなんだか味がしなかった。
 弁当を食べ終わるとゴロンとソファへ横になる。
 
(ひとりよがりの夢を見ていたのかな……)

 千春が柳原こどもクリニックに転職したのが二年前。
 香月が大学病院を辞めたのは一年前。

 真田の言うように大学病院を辞めたのが千春のためだと言うのなら、辻褄は合うような気がする。
 大学病院を辞めたと聞いた時、確かに違和感があった。
 普通なら自惚れすぎだと考えるだろうが、香月にとって千春が『特別』なら、あり得ない話でもない。
 千春が会社で倒れた時、迎えにきてくれたのは香月だった。そのまま大学病院に直行し、精密検査を受ける間付き添ってくれたのも香月だった。
 後にも先にもあれほど香月を心配させたことはなかった。近くで見張っていないと、また無茶をやらかすのではないかと考えたのも無理はない。

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