おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「抱いて……お願いだからっ……」
千春は精一杯の勇気を振り絞った。一か八かのおねだりだった。
結婚を言い出したのは義務感ではなく、ほんのひとかけらでも愛情があるからだって信じさせて欲しい。この結婚には何かしらの意味があるのだと感じたかった。
決死の覚悟にも関わらず、香月は微動だにしなかった。そのまま何分経っただろうか。
一向に動こうとしない香月に千春の方が先に心が折れた。
香月の首から腕を離し、身体を軽く押し返す。
「もういい……。全部忘れて」
「ちぃ」
絶望に打ちひしがれて今にも泣き出しそうな千春の唇に、突如香月が襲い掛かった。
触れるだけの優しいキスではない。何もかもを食らいつくす獣のような荒々しい口づけだった。
そのままベッドに組み敷かれ、頭が真っ白になる。
誘惑したのは自分のくせに、雄々しく迫る香月に戸惑いが大きくなっていく。
「ちぃ、口開けて」
「んっ……ん……!」
息継ぎの度に息が上がる。何も考えられず口腔を動く香月の舌の動きについていくので精一杯だった。
「か、香月くん……?」
着ていた毛玉だらけのセーターがたくしあげられ、キャミソールの上から胸が揉みしだかれる。
ひんやりとした室内の空気に触れると寒いのに、触られたところだけが熱い。