おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

 翌朝、千春は泣いて腫れぼったくなった目をこすりながら一階に降りて行った。
 テーブルの上に置きっぱなしになっていたスマホを手に取ると、送られてきた通知の多さに目を見張る。

「五十件!?」
 
 千春は交友関係がそう広くはない。頻繁に連絡をとる友達も多くない。SNSで知り合ったヅカトモと高校の時の親しい友人くらいだ。
 一晩にして五十件の通知が来ることは、千春にとって異常だった。
 不審に思いながら、メッセージを確認していく。

『気を落とすな』
『生きろ』

「……なにこれ」

 千春は思わず首を傾げた。
 メッセージの内容は今の千春の心情に寄り添ったものばかりだった。

(え、なんか。怖い……)

 すべての謎が解けたのはヅカトモの芽衣からのメッセージを読んだ時だった。

『退団のニュースで落ち込んでいると思うけど、恵流様のご決断を温かく見守ろうね』

「退団!?」

 千春は慌てて黄金塚歌劇団の公式ホームページを開いた。最新のお知らせの見出しには無情にもこう記されていた。


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