おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

「実はあの後、香月先生からお電話を頂いたんです」
「香月先生が?」
「わからないことや不安なことがあったらすぐに相談にきてもらって構わないと言ってくださったんです」
「そう、ですか……」
「私、このクリニックに通っていて本当によかったです。香月先生や洋介先生、それにあなたのような方がこの子に関わってくださってありがたいと思っています」

 更に話を聞いてみると既に必要な検査も終わり、ペースメイカーを取り付ける手術の日程まで決まったそうだ。
 母親は改めて千春にお礼を言うと、まもなく君代から名前を呼ばれ、親子二人一緒に診察室へと消えていった。

(本当に余計なお節介だったな……)

 香月はちゃんとわかっていた。
 千春が出しゃばらなくても、香月はあの親子のことを気にかけ、不安を取り除けるように心を砕いていた。
 香月は柳原こどもクリニックになくてはならない存在になりつつある。

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