おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「行ってきます」
学会のためクリニックが臨時休診となり時間ができた千春は、久し振りにキャロルに行くことにした。
キャロルは黄金塚歌劇団のグッズ専門店であり、東京黄金塚劇場の一階にある。ヅカオタにとっては聖地とも言える。最近はネット通販も充実しているが、千春は直接ショップに赴くのが好きだった。
「特設コーナーができてる……!」
千春はキャロルに到着するなり感激してしまった。入口のウィンドウには退団を発表した星川恵流のグッズが展示されていた。千春が買えなかった限定のグッズや、過去の公演のパンフレットもズラリと飾られている。
(え、どうしよ!?写真撮ってもいいかな!?)
ワクワクしながらスマホを手に取る。最適な構図を模索していると、見覚えのあるブロマイドが端に映り込む。
それは香月にもらった『真夜中のルードリヒ』のブロマイドだった。直筆サインこそないが全く同じものだ。
……すべてはこの一枚のブロマイドから始まった。