おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「おやすみ、ちぃ」
「おやすみ、香月くん」
二人は門扉の前で別れると、各々自分の家の中に入っていった。
千春は手早く風呂を済ませると、もらったブロマイドを写真立てに入れ、祭壇の中央に置いた。
ブロマイドに合わせて、レイアウトも変えていく。
(うん、思った通りの素晴らしい出来だわ……)
三十分かけて祭壇の模様替えを終えると、千春は香月に宣言した通り『真夜中のルードリヒ』のDVDをデッキにセットし再生していく。
何回見ても感動できるし、新しい発見があるのが黄金塚歌劇団の魅力である。一度では足りず二度観賞すると今宵も大満足でベッドの中に潜り込んだ。
(あれ?なんか忘れているような……)
ブロマイドももらったし、『真夜中のルードリヒ』も観賞した。あとは寝るだけなのに、何かが頭の中にひっかかった。
(う~ん……まあ、いっか!)
千春はそう開き直ると、その日は特別にブロマイドを枕元に置き直しぐっすりと眠りについた。
こうして、千春は結婚初日を何事もなく終えた。
……いや、終えてしまったのだった。