おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
晶子は顔を手で覆い隠していたが次の瞬間、千春に向かって拳を突き出し親指を立てた。
「……千春、よくやったわ!」
「褒められるようなことしたっけ?」
勝手に結婚したことに関して怒られる……どころか、晶子は諸手を上げて結婚を喜んだ。
「ああもう……!相手が香月くんなら安心して千春を任せられるわ!」
「大袈裟なんだから……」
肩の荷が下りたと言わんばかりに半泣きで安堵されると、千春のちっぽけな自尊心にだって傷がつく。
「もういい?私、ゴルステ見たいんだけど……」
仕事が休みの日は日がな一日中ゴルステを見て過ごすと決めている。これ以上話すこともないだろう思い、千春はダイニングチェアから立ち上がった。
「待ちなさい、千春」
「……ちぃ」
香月に座るように視線で促され、千春は仕方なく元通り席についた。
「あなた達、結婚式はどうするの?新婚旅行は?指輪は?」
「細かいことはこれからゆっくり決めたいと思います」
結婚したのはいいものの、肝心なことは何ひとつとして決まっていない現状に晶子は呆れ顔だった。