おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
結婚指輪のサイズや納期を確認しお会計を済ませ店の外に出る頃には、すっかり日が暮れていた。
注文した結婚指輪が出来上がるのはひと月半後。結婚指輪を作ることを渋っていた千春だったが、指輪の完成が今から待ちきれない。
「ちぃ、はしゃぎすぎ」
浮かれて軽やかなステップで歩道を歩いて千春だったが、香月に手を握られ現実に戻された。幼稚園児じゃないんだから、手なんか繋がなくても道路に飛び出したりしないのに。
「ねえ、香月くん。結婚指輪のことだけど、本当に全額払ってもらってよかったの?私も出したのに……」
今更だが指輪のデザインからインサイドストーンまで、ほとんど千春の一存で決めてしまった。香月の要望は、支払いを全て自分がするという一点だけ。
「万年金欠のちぃに指輪代を払う当てがあるのか?」
「ありますぅ!」
デザイナーのこだわりが詰まっている指輪なだけあって、相場よりはお高めの値段だったが、会社員時代の貯金を崩せば払えないことだってない。