おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

(うわ……。すごいタイミング……)
 
 香月には千里眼でもあるのだろうか。店を変え、なおも感想を語り合おうとしている千春と芽衣の姿が遠くから見えているとでもいうのか。
 千春は逡巡した。
 芽衣ともう少しじっくり話したいところだけれど、これ以上遅くなったら本当にここまで香月が迎えにやって来そうだ。

「芽衣さん、ごめんなさい。私、今日は帰りますね」
「あら、そう?」

 二人はお会計を済ませると、日比野駅の前まで連れ立って歩き始めた。千春はJRで芽衣は地下鉄だ。日比野駅の前で別れの挨拶を済ませていく。

「旦那さんにもよろしくね。機会があったら私にも会わせてよ」
「ははっ。……会わせる前に離婚してるかも」
「ん?今何て言ったの?」
「何でもないです」
 
 千春は曖昧に微笑むばかりでお茶を濁したのだった。

「じゃあまた今度!」
「はい!」

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