おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

 千春の靴を買い終わるとレストランフロアで遅めの昼食をとった。
 入籍日に食べ損ねたイタリアンだ。
 窯で焼いた熱々のピザとバルサミコのソースがかかった牛肉のローストはとんでもなく美味しかった。食後のデザートにピスタチオのジェラートまで平らげてしまった。
 もちろん、ここも香月の奢りだ。

 そもそも香月と一緒にいて、食事代を出せと言われたことがない。さすがに遠慮して自分で払うと表明したこともあったが、千春がいない隙に支払いが終わっていることもしばしばだった。
 そのうちに千春は無駄な抵抗をやめた。
 
「ご飯も食べたしもう帰る?」
「福引の補助券が一杯になったから引いていくか」

 二人はエスカレーターに乗り、福引会場のある特設ステージまで歩いた。
 ショッピングモール内ではオープン十周年を記念して、様々な催しが行われていた。福引もそのひとつだ。ショッピングモール内のどの店舗でも、購入した商品の金額に応じた福引の補助券を配っていた。千春の靴代と食事代で、ちょうど二回引ける勘定だ。

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