おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

 大浴場から部屋に戻ってくると、ほどなくして仲居がやってきて夕食の支度が始められた。

 客室に引けを取らず夕食も豪華だった。鯛の活け造り、和牛のステーキ、旬の野菜のてんぷら。普段は食べられないようなご馳走がテーブルの上に所狭しと並べられる。

「美味しかった……。もうお腹いっぱい……」
「俺も」

 デザートのミルクプリンまで残さず平らげた二人は、食後はテレビを見て過ごした。
 洋画の放送が始まったところで、タイミングもちょうど良かった。
 この宿はハイクラスの温泉宿だったらしく、テレビの他に娯楽らしい娯楽もなかった。娯楽がないことが、最大の娯楽というわけだ。
 
 日頃、ゴルステで黄金塚の舞台ばかりを見ている千春にとっては、普通の洋画が物珍しく新鮮に映った。二人が見たハリウッド映画は爆発シーンたっぷりのエンターテイメントもので、暇をつぶすにはちょうど良かった。

 大団円で映画の放送が終わったのは夜の十一時を過ぎた頃だ。そろそろ就寝の時間だ。

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