おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「ちぃ!」
「香月くん……?大学は!?」
「病院まで送ってく。今日は診察の日だろ?」
校門前で待ち伏せされた千春は思わず額を押さえた。
近頃の香月の過保護っぷりときたら、千春の方が困らされることが多くなっていた。
(何も……こんなところでっ!)
千春は人目を忍ぶように身体を縮こませながら、校門の前に横付けされた車に乗り込んだ。
「迎えに来なくてもひとりで行けるのに……」
「ちぃは『特別』だからさ。大人しく送られておきなさい」
千春は不満げにむうっと口をへの字に曲げた。
明日登校したらクラスメイトに質問攻めされることを考えると今から憂鬱だった。高校生ともなれば、恋愛の話題を避けては通れない。香月は彼氏ではなく幼馴染だと説明するのには苦労しそうだ。
香月は高校を卒業すると聖蘭医科大学の医学部医学科へと進学した。
聖蘭医科大学は大学病院の隣にある。
当然、香月は実家を出ることもなく、千春に対する異常なまでの過保護は飽きられずに続けられていた。
(『特別』か……)
香月は隠しているようだが、同じ医大生の彼女がいることを千春は知っている。
だからこそ送迎を遠慮したというのに、これでは無意味だ。彼女がいるくせに千春を迎えにくるなんて無神経もいいところ。