おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「なにこれ……?」
千春が発見したのは一通の封筒だった。白色でところどころ埃を被っている。明らかに年代物だった。
千春は夫婦の寝室を片付けていた珠江のところへ封筒を見せに行った。
珠江は何のためらいもなく封筒の中身を取り出すと、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「あら〜こんなところにあったのね。ふふっ懐かしいっ!」
封筒の中には写真が何枚か入っていた。
珠江に手招きされ写真を覗き込んだ千春は驚きのあまり目を見開いた。
(か、可愛い……!)
引き出しの裏から出てきたのは千春の知らない香月の幼い時の写真だった。小学校に入学する前の五歳ぐらいの時に撮られたものだろうか。目はクリクリしていて、頬はぷっくりと膨らんでいるが、唇と鼻の形に面影がある。
「あーあ……小さい時はこんなに可愛かったのに。今じゃあんなにゴツくなっちゃって……」
珠江は変わってしまった息子の姿形を至極残念そうに嘆いた。
どこからどう見ても昔懐かしい微笑ましい写真なのだが、千春には気になる点があった。
それは、香月の着ている服が女児用のものだということだ。