死神のマリアージュ
結局その日、私が“薄く”視えた人は、宅急便のおじさんだけだった。
それにどうやら私だけ、人が薄く視えることがあるらしい。
でも薄く視えるのは見る人全員じゃないし・・・どんな意味があるんだろ。全然分かんない。

(特定の)人が薄く視えることはちょっと気味が悪いけど、私はまだ誰にも――父さんにも――話さないことにした。
現時点では全然知らない宅急便のおじさんただ一人だけだったし、またおじさんと偶然すれ違うことはないと思うし。たぶんだけど。
それに万が一、再びすれ違っても同じおじさんか分かる自信もない。
顔立ちとかほとんど覚えてないし。薄かったから・・・。

私が自分の部屋(前はじいちゃんの部屋)で考え事をしていたとき、スマホのコール音が鳴った。
「界人」と表示されている画面を見て、「普段は極力無表情」な私の顔の中でも、目や眉のあたりに微妙な動きがあった。

番号を交換し合った日からほぼ毎晩、界人とはメッセージのやりとりをしている。
最初にメッセージを送ってくるのはいつも界人だけど。
学園でも会っておしゃべりして一緒にお昼を食べて、クラスも同じで一緒に勉強して。
一日のうちの三分の一くらいは確実に一緒に過ごしているのに、それでもメッセージで「会話」することが・・・界人とならあると、このとき私は気がついた。
でも「会話」とは言っても、「今日は楽しかった」とか「おやすみ」とか、ホントに簡単なやりとりしかしてないけど。

それでも今日に限ってなんで界人は、わざわざコールしてきたんだろ。メッセージじゃなくて。
よく考えても分からないので、ひとまず私はスマホコールを受けることにした。
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