死神のマリアージュ
「おまえは自ら志願して激戦地に行っちまって親だった俺より早死にした、親不孝な息子だったんだぞ」
「それは・・すいませんでした」
「ま、そういう時代だったからな。しょうがねえよ」
「そういう時代って?」
「健康な若い男子はみんな戦場に駆り出されてた時代だ。本人の意思には関係なく」
「そう」
「だから界人」「はい」
「おまえがまだ幼いガキのとき、いじめっ子どもから殴れてたり蹴られても、なんも仕返しをせずにただ耐えてたのは、おそらく過去生からの“持ち越し”だ」
「“過去生からの持ち越し”?ってことは、カルマというやつですか」
「カルマというより“課題”のほうが近いな。おまえが今世で人と争うことを好まず、誰かと戦うことを極力避けているのは、過去生での戦争体験が影響してると言っていい。つまり、過去生での戦争体験を通して相手を傷つけることに対する恐怖心や、戦争を行うことに対する罪悪感を、今世に“持ち越した”ってことだよ」
「はぁ」
「要するにおまえは、“相手を傷つけるくらいなら、自分が傷つくほうがまだマシだ”と考える傾向が強いってことだな」
「あ、確かに・・俺、そう思ってた」
「だから言ったでしょ、界人は昔から強かったって。相手より自分のほうが腕力強いって分かってたから、もし自分が殴り返したり蹴り返したら、相手に大怪我させてしまう。だから傷だらけになっても一切仕返しはしなかったんだよね」
「だからと言って、おまえや忍が界人の代わりに“仕返し”する必要はなかっただろーが」
「私の腕力なんてたかが知れてるもん。それに忍はあのころから自分の手や腕を怪我するような“危険なこと”はしてなかったし」
「じゃあおまえ一人で仕返ししてたってことじゃねえか」
「そんなことない」
「実は一番とばっちり受けてたのは忍だったのか・・・。ようやく明るみに出た衝撃の事実ってやつだな、こりゃ」
< 187 / 359 >

この作品をシェア

pagetop