死神のマリアージュ
そうだ。界人は昔から強かった。
痛みに耐える強い意志と腕力、そして優しい心の持ち主だ。
「(4歳から6歳の)界人くん」が、いわゆる肥満児だったのは、たぶん脂肪が衝撃や痛みを和らげる「クッション」みたいな役割を果たすためだったのかもしれない。実際役に立ってたのかは分からないけど。
界人をいじめてた子たちは、ボコボコにすることで「勝った」という優越感を抱いてたかもしれないけど、実は界人のほうが「負けたようで勝っていた」。
だってあのときから界人は、自分の「主義」と「意志」を貫き通していたんだから。
そして界人はそのことに気づいてた――。

「ちなみに、そのときもおまえたちは恋人という関係でつながりがあった」
「え。そうなの。じゃあ過去生の界人と私は結婚・・」
「までは残念ながらできなかった。こいつが戦死したから」

父さんに親指をさされた界人は、私に「ごめん」と言って謝った。

「戦地に行く前、おまえたちは結婚する約束まではしてたけどな」
「つまり過去生の界人と私は婚約までしていた仲だったの」
「そう。しかし“戦争から無事戻ったら結婚しよう”という約束は果たせなかった。おそらくそれも、過去生からの“持ち越し”だろう」
「そっか・・」

界人は、というより誰も、基本的に過去生のことは覚えてない。
過去生を覚えている状態で生まれ変わっていたら、記憶が混乱してしまう。
それでも界人は今世“でも”、私と出会ってくれた。
今世では「幼馴染」から、お互いに惹かれあって、今世でも「恋人」という関係になった。
過去生では戦場に行くことで、今世で幼かった界人は引っ越したことで、界人と私は一旦離れ離れにならざるを得なかったけれど、それでも今世では再会することができた。だから・・・。

過去生で果たせなかった「約束」を、今世では果たすんだ。
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