死神のマリアージュ
「いやだからー、なぜにそうなるんだよ」
「きよみ女史もモテるからに決まってるでしょ。忍だって知ってるくせに」
「そりゃ知ってるけどさ・・・実はきよみ女史って、男子よりも女子にモテてね?」
「私の場合、“井成きよみ”という一女性としてではなく、漫画家の“黄泉清女(よみきよめ)”を応援してくださるファンの方々からお声をかけていただくことが多いので。ですので神谷雅希女史、および神谷忍氏がおっしゃっている“モテる”の意味とは若干違うかと」
「やっぱりきよみ女史って人気漫画家だったんだ!絵も上手だし、“冥途カフェ”のストーリーも毎話感動して泣いちゃうくらい、すっごくステキだもんね!」
「俺、光栄です!」
「地獄嬉しいお言葉の数々、どうもありがとうございます」
「それで?今日はなんで遅くなったの」
「あぁ、そうでしたね。実は昼休みになってすぐ、進路のことで近江智一(おうみともかず)氏(担任の先生です)と話をしておりましたので、こちらに来るのが少し遅くなりました。神谷忍氏にメッセージを送っておけばよかったですね。そこまで至らず、すみません」
「大丈夫だよ。ちょっとだけ心配してたけど、でも安心した」
「私たち先に食べ始めてたし」
「ですが神谷雅希女史と佐渡真珠女史のお弁当は、まだ全然減っていませんが」
「そう?あっ、ちょうど食べ始めたばっかりだったし。ね?雅希ちゃん?」
「うん。私がたまご焼きを一口食べたところできよみ女史が来たから。はい、これきよみ女史の分」と私は言いながら、きよみ女史に小さなタッパーを渡した。

ミニタッパーの中身はもちろん、二切れのたまご焼きが入ってる。
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