死神のマリアージュ
「まさかとは思うが、“娘として”、父さんに気ぃ使ってんのか?母さんのこと話すと俺が悲しむとでも思って。“まさかとは思うが”ともう一度言うが」
「そんなこと・・・少しだけ」

上目遣いで父さんを見る私に、父さんは怒ったもしくは悲しい顔はもちろんしてないし、怒鳴りもせず、ただ私の髪をクシャッとするようになでながら、優しいまなざしで私を見ながら「アホ」と言った。

この、私の髪をクシャッとするようになでるのは、娘に対する父さんの代表的な愛情表現の一つで、私はひそかに気に入ってる。
父さんにこれをされると、私の心は温かい気持ちで満たされるから。

「おまえは父さんと母さんの娘なんだぞ。特に父さんには遠慮しなくていい」
「分かった」
「母さんのことでなんか聞きたいことでもあるのか?」
「今はない。けど・・そうだ。父さんは、お母さんが“自分の女だ”ってすぐ分かった?」
「ああ。改装前のこの家で、初めて会ったときに確信した。あいつはソファで寝てたけどな」
「なにそれ。もしかして父さん、お母さんの寝込みを襲ったの」
「・・・まさか自分の娘からそういう言葉を聞く日が来るとは・・・。俺白髪増えそう・・」
「私もう15歳だよ」

すまし顔で私がそう言うと、父さんは笑って「そうだな」と言った。
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