死神のマリアージュ
「“これを買いたい”っていうお目当ての石があるの?」
「いえ、特に決めてな・・・」と答えている途中で、ある石にパッと目が留まった私は、そこから目を離せなくなってしまった。

「この子、この石は」
「ちょっと待ってね、カウンターに出すから・・・はい、どうぞ。手に取って見て良いわよ」と松田さんが言ってくれたので、私は小さな一粒の“子”を、そっと手にしてみた。

「・・・ブルーベリルですか」
「そうです。一般的には“アクアマリン”って呼ばれている天然石ね。あなたは石のことをよく知ってるようだけど?」
「天然石が好きで、ときどきアクセサリーを作ってます」
「あらそうなの~。どうりで石を見る目があると思ったわ。でもどうしてこのお店に来たの?別に責めてないのよ。ただうちは、天然石だけを取り扱ってるジュエリー専門店じゃないから見ての通り、数や種類が少ないでしょう?だから純粋になんでかなぁと思って」
「“セレナ”というお店の店長さんから、このお店を教えてもらいました」
「あらっ。あなた、礼子ちゃんのお客様なの!」
「はい」
「それで納得できたわ。10代の若いあなたがプロ級の石を見る目を持ってることがね」
「あ・・ありがとう、ございます」
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