死神のマリアージュ
そういえば、礼子さんは松田さんから何度か石を買ったことがあるって、あの紙に書いてあったよね。
ということは、礼子さんと松田さんって単なる「知り合い」じゃなくて、「仲の良い石友だち」関係なのかな。
松田さんは礼子「ちゃん」って呼んでるし、礼子さんの名前を聞いた途端、松田さんは嬉しそうな、懐かしむ表情になったし。

私が「探るような顔」をしていたのを察してくれたのか、「礼子ちゃんはね、私の教え子の一人なのよ」と松田さんが答えてくれた。

「教え子?ですか」
「ええ。天然石の品質の見極めかたから販売のしかたまで」
「そうですか・・じゃあ松田さんは礼子さんの師匠なんですね」
「“師匠”っていうほど大げさなものじゃないのよ。礼子ちゃんには元々センスと才能があったから、私が教えたことなんてあまりなかったし。母親が娘に料理を教えるような感じ、とでも言うのかしらね。実際礼子ちゃんとは親子ほど年が違うし」
「え?あの・・松田さんがおいくつなのか、聞いても良いですか」
「全然いいわよ~。私は今年で――あと数ヶ月後だけど――72になるの」と松田さんから聞いた私は、「えっ?ホントに!?」と、界人は「マジですか!?」と、素直に驚きのコメントを発してしまった。

「えーっ?でも髪真っ黒で・・白髪ないですよね?」「界人っ」
「染めてるから」
「あぁ、なるほどー」
「ここは小さなお店だけど店長として、お客様と接するお仕事をしているから。私にとっては最低限の身だしなみを整えて“若く見せること”と、“若々しくあること”は、大切な仕事の一環なのよ」と言う松田さんに、界人と私は頷いて同意した。
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