死神のマリアージュ
松田さんは立っているとき、背筋は真直ぐ伸びてるし、声にも張りがある。
体型だって「崩れてない」し、ファッションセンスがない私が言うと説得力に欠けるけど、質の良い服を上手に着こなしてると思う。カシミヤや絹という上質な素材が似合う人、そういう感じ。
(染めている)黒髪にもツヤがあって、何より若々しさの気に満ち溢れてる。
さすがに肌には年齢が表れてる部分があるけれど、「現在72歳」にはとても見えない。

「おかげさまで、“実年齢より若く見える”とか“若いですね~”なんてよく言われるし、私の年を言うと、さっきのあなたたちのような反応をされることが多いわ」
「分かります。ホントに松田さんは70代とは思えないです。断然若く見えますよ。な?雅希?」

あれ・・・?
今、ほんの一瞬だったけど、松田さんが薄く視えた・・・ような気がした。

「雅希?」
「あ・・えっと、実年齢を聞くまで礼子さんとは“年の近い姉妹”くらいの年齢差だろうと思ってました。“親子”じゃなくて」
「ありがと。孫たちにもよく言われるのよ。嬉しい誉め言葉よね」と言った松田さんはフフッとほほ笑んだ。

その微笑みかたも上品でありながら、少女のようなかわいらしさも感じて。
松田さんって「この人みたいな年の重ね方をしたい」と思える人だ。
さっき松田さんが一瞬、薄く視えたのは、ホントに気のせいだったのかもしれない。
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