死神のマリアージュ
・・・父さんは私に心配かけまいと、努めて普段どおりにふるまってたけど・・・実は動揺してるのは「やっぱり」、というべきか。
さっき私の髪をクシャッと撫でてくれたときの父さんの手は、微かにだけど震えてた。

そりゃそうだよね、さっき父さんが言ったとおり、滅多に泣かない私が、記憶にある限り生まれて初めて大泣きしたんだもん。そんな娘の姿を見ただけでも、父さんにとってはすごくショックだったはず。
しかも大泣きの理由が「嬉しいこと」じゃないのは、まだ事情を聞いてなくても明らかで・・・。
警察の仕事に就いてる職業柄、普段から「中庸」であることと「冷静」でいることを誰よりも心がけている父さんが、他人にも(ほんの少しだけ)隠しきれないほどに動揺するのも納得、っていうか・・私だってショック受けてるし、動揺もしてる。
だからこそ「お父さん」って・・咄嗟に呼んでしまってた(それだけでも父さんが動揺した十分な理由になる)。

ごめんね、父さん。こんな形で心配かけて。動揺もさせてしまって。
私はハァとため息をついた。
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