死神のマリアージュ
「そして近江先生もおそらく」
「寿命か」
「はい。近江先生は怪我ではなく、病気で入院するようですし、手術をしてもたぶん治らない。だから近江先生は病気になったことに対する絶望感も抱き続けているし、死期が近いから、雅希ちゃんは近江先生の姿が薄く視え続けているのだと思います。いずれにしても、近江先生が入院することについては姫に聞いておきますね」
「おう、頼む。雅希、少しは落ち着いてきたか?」
「うん・・」と私は返事をした後、抱きついてた父さんの腕に寄りかかって座り直した。

「その人の寿命が垣間見えたとして、その人がいつ死ぬのかっていうのは分からないの?」
「分からないでしょうね。私でも言い当てることはできませんから」
「え?じゃあ頼人叔父さんも人の死期が視えるの?」
「視えることもあれば、感じるときもあります。どちらもそれほど頻繁にはありませんけどね。極力視たり感じたりしないように意識してるので。でも私は未来のビジョンが視えることがあっても、それを100パーセント鵜呑みにしたり、受け入れることはしません。なぜなら未来のビジョンは・・・?」
「・・・起こる“かもしれない”という、“可能性の一つ”に過ぎないから」
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