死神のマリアージュ
「あっ、それに私が最初に視えたビジョンがそれだったんだよね・・・て思うと父さんの説は案外当たってるかもしれない」
「それにビジョンで視えた未来の雅希ちゃんは、今とそれほど外見上の違いはなかったのなら、“今までの自分にさようなら”というような意味合いもあるかもしれませんね」

ホントだ。一つの物事に対して可能性や見解(見かた)は一つじゃなくて、無限にある。
その中から私はどの可能性を選ぶのか。
そして私はどうするのか、どうしたいのか―――。

たまに未来のビジョンが視えたり、人が薄く視えることがある現象は、私自身が選んだことじゃない・・と思う。少なくとも私自身が「そうなりたい」と望んだことじゃない。
だけどそうなってしまったことに対してやみくもに不安がったり、死に対してただ怯えるだけより、「そこから」私はどうするのか、私はどうしたいのか。
そっちのほうが断然大事だ。

「その表情は真希にそっくりだな」
「え?私、今どんな顔してた?」
「“覚悟を決めた”って顔。凛とした強さがあって良い表情してたぞ。さすが俺と真希の娘だ」

優しい笑顔で父さんに髪をクシャッと一撫でされた私は、照れを隠すように「ふーん・・・そぅ」と呟きながら、顔がほころぶことを止められなかった。
写真でしか見たことがないお母さんだけど、「お母さんと似てる(そっくり)」って言われると素直に嬉しい。
それに「母さんと似てる(とかそっくり)」は、父さんの誉め言葉の一つだし。
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