死神のマリアージュ
まさか界人のほうからどうしたいのかを聞かれるとは思ってなかった私は、一瞬答えに窮してしまった。
「正夢みたいな夢」の中では、こんな会話はしてないし。
でも、「今」「このとき」が私たちにとっては「生きている現実」であって、「正夢みたいな夢」は、あくまでも「夢」。だから必ずしも「現実に起きた(または起きる)こと」であるとは限らない―――そうだ、「可能性は一つじゃない」し、「起きることは自分で選べる」この世の法則を忘れちゃいけない。

私は、テーブルに乗せた両手にグッと力を込めた。

「わたし・・私、界人の寿命なんて絶対見たくない。それに絶望した界人が薄く視えたらって思うと、すごく・・・怖い」
「俺が絶望するのは、おまえと“一方的に”別れるときだけだ」
「・・・え」

思わず顔を上げた私に、界人は私を安心させるような笑みを浮かべながら言った。

「それか、おまえと“理不尽な別れかた”をしたときも、やっぱり俺は絶望する。あぁあと、俺自身の行いのせいで、おまえに悲しい思いをさせたときも。俺は、俺自身に失望するのを通り越して、絶望するくらい悲しくなる」
「界人・・」
「おまえが怖がる気持ちは分かるよ。でも“だからおまえと別れる”っていう選択肢は、俺にはない」
「・・・え」
「最初から」
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