死神のマリアージュ
そしてアメリカから宮城に引っ越した魁家は、その後飛鳥さんを引き取ることになり、それがきっかけで宮城で「みんなの家」という児童施設の「支家」運営を始めた。
それから大学進学を機に宮城から上京して(当時)一人暮らしを始めた飛鳥さんは、東京にある「みんなの家」でボランティアスタッフをしている。
そして飛鳥さんは当時、「みんなの家」で暮らしていた真珠とそこで出会って恋に落ち、現在は婚約まで至ることを教えてもらったときには、あまりの「偶然なつながり具合」に驚き過ぎて、私の腕には鳥肌が立っていた。

だって「みんなの家」は、ナツノさんと、ナツノさんのパートナーであるレンジさん夫妻が創設・運営している、主に親が犯罪者の子どもを受け入れている児童施設で(でも真珠の両親は犯罪者ではなく、殺された被害者だ)、ナツノさんとレンジさんは、現在警視監の父さんの元上司。
だから父さんの娘である私も、ナツノさんとレンジさんのことは知ってるし、実際に会ったことも何度かある。

ナツノさんとレンジさんは今、「みんなの家」の運営に全力を注いでいて、父さんが属している通称「ゼロ課」の仕事は、資金面の援助に留まり(ナツノさんは元々寄付者で、「ゼロ課」の創設者。レンジさんは、ナツノさんのパートナーになった時点で、寄付者の役割も請け負っている)「現場指揮は神谷(父さん)に安心して任せることができるから、私たちは退くことにしたの」と、ナツノさんから聞いていた。

そして父さんも、もちろん「みんなの家」のことは知っていて、クリスマスプレゼントを届けるために、私が知ってる限り一度だけ、「みんなの家」に行ったことがある。
そのとき真珠も「みんなの家」で暮らしていたと思うけど、父さんは顔(中)に白髭をつけ、体には詰め物とかして「本格的なサンタの恰好をしてた」らしいし、その「サンタ役」は、「プレゼントを渡し終わったら、すぐ帰っちゃった」そうなので、入学式の日に保健室で父さんを見ても、真珠は「初めて会った知らない人」だと思ったのだろう。

界人と私は幼馴染だったことを抜きにしても、私たちは、飛鳥さんや真珠を含めてみんな、昔から「縁」でつながっていたんだ。

『今離れ離れになっても、縁が切れなきゃまた会える。いつか必ず』

・・・そうだね、父さん。
たとえ私たち自身が知らなくても、つながってる限り、「縁」のある人とはいつか必ず会えるんだ。
そして父さんは「知って」いた。
一旦離れ離れにならざるを得なかった私たちが再会するって―――。
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